今回はエレキギターやエレキベースを録音する時に、当スタジオで気をつけているノウハウをシェアしたいと思います。
ミュージシャン自身でレコーディングする機会が多いと思いますし、レコーディングスタジオで録音する時にも役立つ情報だと思いますので、ぜひ参考にしてみてください。
トーンでハイカットし過ぎない。EQし過ぎない。
レコーディングに慣れないうちは本体のトーンコントロールやアクティブ楽器のEQはなるべくなら使わずにフラットな音にしておくと良いです。なぜなら事前の過度な音作りをしたものを後からフラットに戻すことができないからです。
例えばジャズ系のギターやレゲエのベース等、最終的にトーンコントロールを絞った丸い音にしたいケースは多いと思います。
しかし丸い音作りはミックスダウンでも可能なため音作りに慣れないうちは、mix工程で大きく音作りをした方がベストな結果になることが多いでしょう。
ギターをアンプ録音する時のアンプにセッティングも同様です。
もちろん全体の音を考慮した上でギターやベースの音のイメージがしっかり出来上がっている場合や上級者の場合、録音前の音の作り込みは良い結果をもたらすのでドンドンTRYしてもらって問題ありません。
アンプ録りの場合、必ずマイクからの音を聴いて音作りする。
アンプから出した音をマイク録音する時には、必ずマイクから拾った音を確認しながらアンプやギターのセッティングをしましょう。
これは『アーティストがプレイ中に聴いているアンプからの出音』と『マイクから拾われた録音される音』ではリスニングポイント(音を聴く位置)ずれていて音色が大きく変わるためです。
通常はアンプはだいたい床に置いてギタリストは立って演奏する事が多いと思います。しかし録音の時はマイクセッティングでかなり音が変わりますし、またマイクやマイクプリの種類によっても録音される音は大きく変わってきます。
ですのでマイクを経由した音をスタジオのモニターで確認しながらアンプやコンパクトエフェクトのつまみを調整して音色を作った方が良い結果になります。
●レコーディングスタジオの場合
ブースにアンプを置き、コンソールルーム(MIXする部屋)を行き来して音を確認する。あるいはコンソールルームで演奏する。
●リハスタなどでのセルフレコーディングの場合
数小節からワンコーラス程度レコーディングしてプレイバックして判断する。プレイバックしてイメージとズレていればアンプやコンパクトエフェクトの調整をして再度録音して聴くと繰り返す。
少し時間はかかりますが、こういった細かい調整が後々の仕上がりの音に大きく影響してくるのです。
目的の音を考えての弦の交換。
チューニング安定と求める音色の観点から弦交換のタイミングを考えましょう。
私の場合の楽器ごとの目安を下にあげていくので、自分のケースにあわせて参考にしてみてください。
エレキギター
私はほとんどの場合、レコーディング30分前〜数時間前くらいに交換します。エレキギターはきちんと張り替えれば30分程でチューニングも安定しますし、古い弦は抜けの悪い音になったりオクターブチューニングがあわないデメリットがあります。JAZZなどで少し丸い音がほしい場合は1日前くらいに変えています。
エレキベース
ベースの場合は音色の好みによってタイミングが変わってくると思います。エレキベースもきちんと張り替えれば30分〜1時間もすればチューニングも安定しますしオクターブも揃って良いのですが、音色はかなりパキッとしますよね。私はエレキベースの張りたての弦の音が好きではないので2週間〜1ヶ月くらいして音色が落ち着いてからレコーディングします。
張りたての抜けのよい音が好きな人は張り替えたての方がベストなので30分前〜数時間前の交換で問題ないです。
ガットギター
ナイロン弦はスチール弦と比較すると、張り替えた後しばらくチューニングが安定しないのでレコーディングの数日前から交換しておいた方が良いと思います。ガットギターはピエゾピックアップ付でもレコーディングではコンデンサマイクで録音する事が多いので、普段弦を交換する時から【チューニングの安定/生音の鳴りの良い状態】の大体の日数感覚を意識しておいてレコーディングにあわせるとベストかと思います。
●空間系エフェクトのかけ録り。
空間系エフェクトは『かけ録り』するか『MIXで処理』するか、の判断は欲しい音のイメージで判断する。
【空間系エフェクトかけ録り】
- メリット:MIX工程での空間処理では出せない特有の音色や質感が得られる。
- デメリット:エフェクトをかけ過ぎたりした場合、あとから減らしたりが出来ない。
【MIXでの空間エフェクト処理】
- メリット:MIX工程で処理する為、非常に細かい音の調整が可能になる。
- デメリット:かけ録りのような質感を作ろうと思うと意外と時間がかかる場合が多い。
エレキギターは特にギター+エフェクト+アンプで1つの楽器という面があります。空間系エフェクトなどもアンプでのドライブ感/歪みなどが付加された特有の音色になります。
ですので、このパートは絶対このイメージ!と決まっている場合は空間系エフェクトでもかけながら録音すると良いでしょう。ただ後からやり直しは効きませんので、自分で決めたエフェクトの設定から少しだけ空間系エフェクトの量を減らして録っておくと経験上ミックスダウンで融通がききやすいですね。
もちろんトーンの項目と同様、全体の音を考慮した上で音色のイメージがしっかり出来上がっている場合はイメージ通りの音で録音して問題ありません。
録りなおしする可能性がある時はセッティングをmemoする
どうしてもあとから差し替えたい場所が出てきたりアレンジが変更になってフレーズが変わることがあったり、日をまたいで録音するケースはレコーディングでは良くあることです。
録りなおしの可能性がある場合は、エフェクト/アンプのセッティングやマイキングはmemoをしておきましょう。
今はスマートフォンなどを使えば写真なども組合せて分かりやすくmemoできると思います。iPhoneでしたら純正メモアプリ(iOS8)でも写真も取り込めますし、Evernoteなどはクラウドにデータを保存できるので便利で良いと思います。
●EVERNOTE
Evernote 7.6.2(無料)
カテゴリ: 仕事効率化, ユーティリティ
販売元: Evernote – Evernote(サイズ: 60.5 MB)
全てのバージョンの評価: (44,710件の評価)
iPhone/iPadの両方に対応
ちなみに私は『My Measures』というアプリを愛用しています。
これは本来は部屋やモノの寸法をメモする為のアプリで写真をとって簡単に寸法を書き込め便利です。色々な用途に使えるのでかなり愛用しています。
●My Measures
私の測定 – My Measures & Dimensions – DIYのための最高のアプリ 4.10(¥300)
カテゴリ: 仕事効率化, ユーティリティ
販売元: SIS d.o.o. – SIS d.o.o.(サイズ: 32 MB)
全てのバージョンの評価: (372件の評価)
iPhone/iPadの両方に対応
●まとめ
どうだったでしょうか?
仕事でレコーディングをしていたり長く宅録をしている人には当たり前かもしれないですが、エンジニア/プレイヤーとして普段私が心がけている5つのルールをあげてみました。
重要なのは、
- レコーディング後に戻せないことは大きく処理し過ぎない
- レコーディング前にできる音作りはやっておく
という2点です。
これらは矛盾している感じですが意識してレコーディングやMIXを経験していくうちに、この2点の自分にとって曲にとってベストなバランスが分かってくると思います。
セルフレコーディングでもスタジオレコーディングする場合でも参考になるように書きましたので、良い音を録音する手助けになれば幸いです。